ビジネス英語での電話対応
いかにメールの時代とは言え、国際的なビジネスにおいては、外国の会社に電話をかけたり、あるいは外国人からの電話を受けたりすることは日常茶飯事です。電話での英語による会話も、基本的には通常のビジネス会話とそれほど大きく異なるわけではありませんが、電話ならではの独特の表現もありますので、それらはしっかり覚えておく必要があります。ここでは、「①電話の取り次ぎ」、「②不在時の対応」、「➂伝言依頼」に分けて説明します。
電話の取り次ぎ
一般に電話をかけたり、受けたりする場合には、通例、次のような会話が交わされます。
Hello, ABC Trading. How may I help you?
(もしもし、ABCトレーディングです。どのようなご用件でしょうか?)
Hello, This is Taro Yamada from Inter-Hopes.
(もしもし、インターホープスの山田太郎です。)
Could I speak to Mr. Smith, please?
(スミスさんはいらっしゃいますか?)
解説
電話で自分の名前の名乗るときは、「This is 自分の氏名 from 自社名」の形で伝えるのが一般的ですが、「My name is 自分の氏名 from 自社名」や「I’m 自分の名前 from 自社名」でも問題なく通じます。
次に取り次いでもらいたい人の名前を告げますが、その際には、 「Could I speak to Mr./Ms. 相手の名前?」というパターンを用います。
もちろん、Could I~ だけではなく、May I~、あるいはCan I~なども普通に使えますが、最も丁寧に感じられるのは Could I~ですので、まずはこの表現を暗記しておくことをお勧めします。
ところで、その会社にスミスという姓の人が一人しかいない場合には、このやり取りで問題なく取り次ぎが完了しますが、従業員が非常に多い会社や比較的小規模な会社であっても同姓の人が複数いる場合には、次のような質問をされることがあります。
先ほどの続きでは、
Excuse me, but do you know which section he is in?
(申し訳ございませんが、どの部署かお分かりでしょうか?)
Yes, he is in the Marketing department.
(はい、マーケティング部です。)
Hold on, please.
(少々、お待ちください。)
Could I speak to Mr. Smith in the Marketing Department ?
(マーケティング部のスミスさんはいらっしゃいますか?)
Extension 218, please.
(内線218番をお願いします。)
ところで、「局」「部」「課」「係(班)」などの呼び方は組織によってまちまちです。以下に、日本の官公庁における部署名の英訳例を挙げておきますので、参考にしてみてください。ただし、これらの表現はあくまでも目安に過ぎないので、実際にはその会社や組織ごとに個別の部署名を確認する必要があります。
局:bureau
部:department
課:division
室:office
係(班):unit, section
なお、「Hold on, please.」は、電話の際に「少々お待ちください。」と告げる際の決まり文句です。 その他にも、同様の意味を持つフレーズとして、「One moment, please.」や「Just a moment, please.」などがあります。これら2つの表現は、電話以外でも、人を少しお待たせする際によく使われています。
不在時の対応
もちろん、電話をかけたからといって、必ず相手と話ができるとは限りません。電話をかけた際に相手が不在の場合もありますし、会議中などということもあるでしょう。
その場合には、通例、次のような会話の展開となります。
Hello, ABC Trading. How may I help you?
(もしもし、ABCトレーディングです。どのようなご用件でしょうか?)
Hello, This is Taro Yamada from Inter-Hopes.
(もしもし、インターホープスの山田太郎です。)
Could I speak to Mr. Smith, please?
(スミスさんはいらっしゃいますか?)
I’m sorry, but he is not in the office right now.
(あいにく、ただいま、社内にはおりません。)
OK. When is he coming back?
(わかりました。いつ頃お戻りですか?)
He will be back around 4 o’clock.
(4時頃に帰社する予定です。)
ちなみに、社内にはいるけど、ちょっと席を外しているのであれば、「He/She is not at his/her desk right now.」という表現が使われることが多いです。
また、電話中の場合は、「His/Her line is busy right now.」や「He/she is on the other line right now.」が、会議中であれば、「He/She is in a meeting right now.」が、またランチ中であれば、「He/She is on his(her)lunch break right now.(ランチ中です)」といった表現がよく使われます。
なお、帰社時間を尋ねる際は、主に「When is he/she coming back?」か「When will he/she come back?」のどちらかが使われます。もちろん、どちらも意味は変わりません。
通例、社員は出かける前に上司や秘書等におよその帰社時間を告げていくので、「He/she will be back around 〇 o’clock.(〇時頃に帰社する予定です)」などといった返答が返ってくるものです。しかし、不測の事態等もありますから、帰社時間がはっきりしないことも絶対にないとは言い切れません。
その場合には、
I’m sorry, but I’m not sure what time he/she will be back.
(申し訳ございませんが、帰社時間は分かりかねます。)
I’m afraid he/she is not in the office now, and will not be back today.
(あいにく外出しており、本日は戻る予定はございません。)
先ほどの例文の続きですが、何らかの理由で、今すぐに取り次げないことがはっきりすれば、次のような展開になることが多いです。
Should I have him call you back?
折り返すように伝えましょうか?
No, it’s OK. I’ll call again around 4.
いいえ、結構です。4時頃また電話します。
OK. Thank you for calling. Bye.
わかりました。お電話ありがとうございます。失礼します。
また、「have 人 ~(動詞の原形)」の形で、「人に~させる」「人に~してもらう」といった意味を表します。ちなみに、「get 人 to ~」でも、同様に「人に~してもらう」という意味を表すことができます。
I got him to do his best.
私は彼にベストを尽くさせた。
いずれにしても、この場合のhave は、いわゆる「使役動詞」です。ただし、同じ使役動詞であるmake より強制力が弱く、letよりもやや強制力(無理やりな感じ)が強いという特徴があります。
したがって、「Should I have him call you back?」は、「折り返すように伝えましょうか?」「折り返えさせましょうか?」といった意味になります。
なお、call backは「電話を折り返す」を意味する熟語です。 具体的には、「call 人 back」で、「人に(電話を)折り返す」という意味を表します。
ですから、「私は、彼女にすぐに折り返します」と言いたい場合には、「I’ll call her back soon.」と表現することができます。
伝言依頼
もちろん、電話をかけた当日に折り返してもらうなどして、相手とコンタクトが取れるのが理想的ですが、電話した日に帰社予定がないとか、休みをとっているとか、あるいは出張に出かけているなどといった場合は、すぐには折り返せません。すでに帰宅した場合や休んでいる場合は、「He/She has already left for home today. (本日は、すでに帰社いたしました)」、休みをとっている場合は、「He/she is off today.(本日は、お休みをいただいております)」、出張中の場合は、「He/she is on a business trip now.(ただ今、出張中です)」といった表現が使われます。こうした場合には、事実上、当日中に折り返してもらうのは難しいので、伝言を残すというケースが増えてきます。
その際は、概ね、次のような会話が展開されます。
Hello, ABC Trading. How may I help you?
(もしもし、ABCトレーディングです。どのようなご用件でしょうか?)
Hello, This is Taro Yamada from Inter-Hopes.
(もしもし、インターホープスの山田太郎です。)
Could I speak to Mr. Smith, please?
(スミスさんはいらっしゃいますか?)
I’m sorry, but he is on a business trip now.
(あいにく、彼はただ今出張中です。)
Would you like to leave a message?
(伝言を承りましょうか?)
Yes. Could you tell him that I called?
(はい。私から電話があったことをお伝え願えますか?)
「Would you like to~」は、「Do you want to~」を丁寧に言い換えた表現です。上記の例文では、「~を承りましょうか?」と意訳していますが、もともとは「~されたいのでしょうか?」という意味です。
ちなみに、「I would like to~」は「I want to~」の丁寧形で、「~させていただきたいです」といったニュアンスになります。また、「I would like 人 to~」となると、「人に~していただきたい」という意味を表すことができます。
I would like you to change your mind.
私は、あなたに考えを改めていただきたいです。
「Could you tell him that I called?(私から電話があったことをお伝え願えますか?)」の「Could you~」は、「Can you~」の丁寧形で、「~していただけますか?」という意味になります。「that I called」は、「私が電話をしたという事実」という意味です。
上記の例文では、「Could you tell him that I called?」と述べ、出社日に自分のほうから電話をするパターンになっています。
しかし、もしあなたが顧客の立場であれば、
Yes. Please tell him to call me back as soon as possible. My number is 〇〇〇〇〇.
はい。できるだけ早く折り返しのお電話をくださるようお伝えください。私の電話番号は、〇〇〇〇〇です。
伝言を残す場合に注意しておくべきことは、たとえ同じ会社の人間であっても、機密情報にかかわるような重要なことを「伝言」という形で安易に伝えるべきではないということです。「大事なことは本人に直接告げる」というのが、ビジネス上の鉄則だということをしっかり肝に銘じておきましょう。